この日の意味
平成14年6月14日。ワールドカップと関連してこの日がなんの日かを 問われればしっかり答えられる人はわりといるかもしれない。サッカーの 日本代表チームが大阪で行われた予選リーグ第3戦でチュニジアに 勝って決勝リーグ進出を決めた日である。そう、大阪で起こったことである。 大阪だったか。この「ひとりごと」のタイトルはまちがっているのではないか? 確かに横浜でもサッカーの日本代表チームの試合はあったが6月10日である。 何か食い違っていないか?
ここで取り上げるのは残念ながらサッカーではない。そもそも筆者は サッカーにそんなに興味はない。ワールドカップの結果も一応把握はしている つもりだが、仕事を休んでまでテレビ観戦、といったこともしていない。 サッカー自体も、横浜フリューゲルスがなくなった時点でJリーグの結果も ほとんど気にならなくなった。筆者は野球好きなのである。個人的には 根っからの野球人はサッカーとは両立しにくいのではないかという考え方を なんとなく持っているが(両立という言葉が、筆者の言いたいことを表現 できているかわからないが)、まあ、それはそうでもない人もいるかもしれない。
6月の野球
高校時代まで気づかなかったが、6月のアマチュア野球は、実は熱い。 まず大学野球について言えば、春のシーズンが4・5月、秋のシーズンが9・10月である。 そうすると一見6月は関係なく見えるが、そんなこともない。春のシーズンの 終了にともなって大学野球選手権が行われる。全国各リーグの優勝校が集まって (26校)、トーナメントを戦う。一般人にもそれなりに注目される有名リーグはともかく、 筆者の所属したリーグのような無名リーグからすれば、世に認知してもらう唯一の機会と 言ってよい。筆者の母校は自分の在籍した時期を含めてただの1度も出場したことも ない大会だが、とにかく毎年リーグ代表校の活躍は期待している。
もう一つ大学野球について言えば、入れ替え戦も行われる時期である。 神宮(大学野球選手権)に出るか出ないかも大きな問題であろうが、入れ替わって 下部に落ちるかどうかはそれ以上の問題と言ってよい。あるチームが優勝できずに 神宮に出られなくとも次のシーズンにまたがんばる機会はあるが、下部に落ちれば 下部から戻るのに少なくとも1シーズンかけなければならず、少なくとも次の シーズンにはがんばっても下部からの復帰が上限で、神宮どころではない。 復帰を果たさなければ神宮を目指す機会すらないのである。そんな入れ替え戦、 当然ながら本気同士がぶつかる緊迫感あふれる死闘。見る者の興味を引く 要素は多分にある(やる人は大変である)。
社会人野球について言えば、夏に行われる都市対抗野球の、予選がだいたいこの時期にある。 都市対抗野球と言えば一般にもある程度認知があるだろうから、これに出場できるか できないかは、特に宣伝の意味では企業チームにとって大きなことである。 おそらくは「都市対抗本戦で何回戦まで進むか」より「都市対抗に出るか出ないか」の方が 大きな問題であろうから、そう考えると予選は本選以上の重みを持っていると言ってよい。 実績を残さなければ廃部になるこの時代、企業チームにとって本気にならない理由はない。 本気同士のぶつかりあいが見られる都市対抗予選、これまた見物である。
横浜で見た熱い戦い
だいぶ前置きが長くなったが、結局平成14年6月14日に横浜で何をしたのか? 結論を言うと、都市対抗野球の神奈川県予選敗者復活2回戦を見に行った。 企業チームの社員に気を使ってか、午後6時開始ということになっており、 筆者も定時で仕事を終えて勤務地から横浜スタジアムに向かうとギリギリ間に合う。 自分の会社のチームではないのだが、野球好きということもあり、興味本位で 観戦に行った。三菱ふそう川崎と東芝の対戦である。 ここ2年連続都市対抗本選出場を逃し、今年から監督も代わった東芝。 本社(三菱自動車)が全国四つの野球部のうち二つをクラブ化することを発表した ばかりで、「残す方」と指定された三菱ふそう川崎。よけいなお世話ではあるが 会社の事情まで考えると絶対に負けるわけにいかない同士の対戦。
横浜スタジアムに着くと球場の外でサッカーファンらしき集団が盛り上がっている。 おそらくは午後3時半からの試合で日本がチュニジアに勝ったのだろう。 大阪で勝ったのになんで横浜で盛り上がるのか、サッカーのことなのになんで 野球場のそばで盛り上がるのかは疑問だった。筆者がせっかく熱い戦いを楽しみに 来ているのに、都市対抗野球を冒涜されているのではないかとまで思った。 しかしそんな連中に気を取られることさえむだである。入り口へ急ぐ。
球場に入るといつも同じような位置で見るのでそのへんの席に座る。 バックネット裏である。わりとすぐに試合が始まる。先発は東芝が香月良太 (柳川高校出身)、三菱ふそうは森大輔(七尾工業高校出身)である。 ともに高卒2年目の同期。昨年春の「グランドスラム」誌 では期待の高卒新人として表紙を飾った同士である。先発での対決は初めてのはず。 ちゃんとは調べていないが同じ試合でお互いに登板するのも多分初めてだと思う。 大事な大一番であいまみえるライバル。ともに2年目ながら実績を残してきて 大事なこの試合を任せられるまでに成長してきた。筆者の単に「負けられない者同士の 熱い戦いを見たい」という欲求のみならず、マスコミ的にもうれしい試合となった。
森の直球は速い。実は昨年、森の社会人野球デビューという試合で間近で森を 見る機会があったのだが、多少荒れ気味ながらかなりの迫力を感じた。 これまでに見た全部のピッチャーを覚えているわけではないが、プロ以外では とりあえず森の直球が1番速いかもしれない(断っておくが、それほどたくさんの選手を見て まわっているわけではない)。おそらくは140km/h後半は出ているのだろう。 ましてこれが左投手だから打つのは至難そうだ。高校時代に菊地原毅 (相武台高校出身、現広島東洋カープ)と対戦したことがあり(打席に 立ったわけではない。ベンチから見た)、そのときのカーブはそれまでに見たことも ないと思うほど落差があったが、おそらくは直球は140km/h前後くらいだったろう。 とりあえずの筆者の中の最大衝撃が菊地原だったとして、数字的にも印象的にも 森はそれを越えていると考えてよさそうだ。 この試合も東芝打線にあまり打たれそうな気配がない。細かな コントロールはまだあまりないみたいでたまに甘く入った球とか、スライダー とかをヒットされたりして、あるいは内野安打が出たりして記録の上ではわりとヒット数が 出ているがしっかりと投げ込んでいいところに決まる直球は打たれそうにない。
一方の香月だが、一般の野球ファンにはこちらの方が名前が通っていると思う。 高校3年次に春も夏も甲子園に出場している。ちゃんとした成績は忘れたが、 ベスト8くらいまで勝ち進んでいるのではないかと思う。この試合、さすがに 森の直球に見劣りはするがスライダーがいいかんじで、全体としてもまずまず まとまっている。最初のピンチは3回。中村大吾(日本体育大学出身)に2塁打を打たれた1死2.3塁から 梶山義彦(静岡高校出身)に一二塁間を抜かれ1点。死球を挟んで高根澤力(日本大学出身)の ライトへのライナーをライトが前進しきれずワンバウンドで処理して1点。 なおも満塁のピンチ。森の調子から言ってこれ以上失点すると追いかけるのは 苦しい。しかし香月も耐えた。後続を抑えてなんとか2失点でしのいだ。
「直球が決まれば打たれそうにない」と見えた森、6回2死から石丸裕次郎(駒沢大学出身)に死球。 打ちに行ったところに腕に当たったようにも見え「スイングしてるじゃないか」 といったジェスチャーもする森。2死1塁で1番の工藤賢二(駒沢大学出身)。 全日本の経験もあり、確かシドニーオリンピック予選でセカンドのレギュラーだったと 思うが、この試合は左腕の森の前にいいところがない。ところが甘く入った スライダーをとらえた。ライトスタンドに飛び込む同点の2ラン。 まさかとは思ったが細かなコントロールに課題がありそうだったのが出てしまった というところだろうか。
2−2の同点。6回裏、香月は1死1.3塁のピンチを迎えて降板。2番手にエース格の 右アンダー・銭場武士(東洋大学出身)が告げられた。3回に2点を失ったものの その後のピンチも抑えたし6回途中までの2失点(降板の段階では失点数は決まらないが)。 まずまずだろう。本人としては森より早く降りるのは気に入らなかったかもしれない。 しかしそんなことも言っていられない。負けられない試合なのである。 そして、香月が降りたということでこの「ひとりごと」でも、森VS香月の対決という 視点はとりあえず終わりにしよう。試合もちょうど大事な局面を迎え始めている。
この1死1.3塁のピンチは銭場が切り抜けた。続投の森はあいかわらず力強い投球を続け、 ここからは1点勝負の様相。森は7回に2三振、8回に2三振、9回にも2三振を奪って 奪三振は13を数えた。元全日本メンバーの平馬淳(法政大学出身)も高めのボール球を振らされて 三振を喫するなど、まだまだ勢いはある。さて、森の力投に答えたい三菱ふそうだが、 7回には1死3塁で4番・西郷泰之(日本学園高校出身)が勝負を避け気味に 歩かされ、5番・高根澤にスクイズを敢行させるもファールで逸機。 8回には1死1.2塁でコーチ兼任のベテラン・桑元孝雄(武相高校出身)を 代打に送るも得点ならず。9回には1死無走者の場面でも西郷が慎重に攻められて ストレートの四球。塁上をにぎわせながら得点には至らない。
対する東芝は延長10回、2死2塁として7番・安田真範(亜細亜大出身)。 下位打線とは言え長打力もある右の強打者である。 四球も考えながらの配球になりそうだったが、森がストライクを欲してしまったか。 ピッチャーというのはえてしてそういうものらしい。やや甘く入った球をピッチャー 返しされ、センターにゴロで打球が転がった。代走の山地良太(九州東海大学出身)が走る。 本塁はきわどいタイミングと思ったがコーチャーはまわす。止めたところで森から 打力で点を取れるとは限らない。1点勝負。妥当だろう。しかしセンターからの返球が すばらしかった。きわどいどころではない。完全に余裕を持ったタイミングでの アウトだった。よく守った、三菱ふそう。 そしてその裏、安打と四球で無死1.2塁。ピンチのあとにチャンスが来たものの、 途中出場の谷山尚也(旭川大学出身)がバントを空振りして2走が憤死。 ありがちなプレーと言えばそれまでだが、大事な場面でバントができない。 谷山という選手はレギュラーではないし、筆者もあまりよく知らない選手。 しかしこのチームのバント失敗を見ると、レギュラーかどうかとか個々の技能が どうかというよりも、チームにバントという文化がなかったからうまくいかないのでは ないかとも思う(実は前の打者も無死1塁で最終的には四球になったがバントを 2度ファールしている)。大事なチャンスをつぶしてしまった。
11回裏、三菱ふそうは1死から3番・梶山がヒットで出塁して西郷にまわる。 ここで東芝は銭場から須田喜照(専修大学出身)にスイッチ。昨年のワールドカップ メンバーにも入ったベテラン左腕である。ここは西郷と勝負してくれたが センターフライ。東芝も必死にしのぐ。
三菱ふそうの投手は11回に森から佐藤大士(中央学院高校出身)に代わっていた。 もったいない気もしたが森が10回までに153球を投げていることを考えれば仕方なかろう。 その佐藤から東芝は12回、先頭の福田敏久(立命館大学出身)が二塁打で出塁し、 平馬がバントを決めて1死3塁。三菱ふそうは大事なところで決められなかったバントを 東芝は決めた。ついに待望の1点が入るか? 打席に4番の伊勢泰孝(法政大学出身)。 4番タイプではない左打者だが、仮にも4番に座っている以上は何かするだろう。 しかし内角へのスライダーを空振り三振。5番には代走の山地が入っていたが、 代打佐藤秀樹(東洋大学出身)。これも倒れて勝ち越し点が奪えない。
14回表、東芝は佐藤から松田直樹(青山学院大学出身)・工藤が連打、福田が送って1死2.3塁。 三菱ふそうは平馬を敬遠しての満塁策。そして投手交代だ。4番・伊勢、5番・佐藤と左打者が 続くところで左投手をぶつけたいところだがめぼしいところが思い浮かばない。誰が出てくるだろうかと 思っていたら右アンダーの加藤武治(東京学芸大学出身)が出てきた。東京学芸大学は筆者が卒業した 大学と同じリーグに加盟しており、同じリーグの出身者としてがんばってほしいと 思っている選手だ。いつのまにかこんなところを託されるほどの信頼感を得てきていた。 迎えるは伊勢。前の打席で決めていればここまで延長戦は長引かなかったであろう。 また、だいぶ昔の話になったが3回の守備ではライトへのライナーをワンバウンドで 処理してしまい、1点を与えてしまっていた(ダイレクトで捕っても1点入っていたかも しれないが)。気持ちとしては盛り上がってしかるべき。しかしここも内角への スライダーを空振り三振。気持ちがあっても技術がなければ仕方ないのだろう。 佐藤も三振。応援している加藤が絶体絶命のピンチを連続三振で切り抜け、筆者は感動した。
14回裏、三菱ふそうは2死から佐々木勉(中央学院高校出身)が四球。9番・谷山に代打で 黒川泰成(中京大学出身)という選手が出てきた。捕手の控えだったと思うがあまり知らないし、 見たかんじ須田を打てそうにない。しかしなんとか四球を選んで1.2塁。1番にまわったが ここに入っているのも捕手の控えで途中から指名打者に入っていた池田晴彦(河南高校出身)。 すばらしい体つきで実績もセンスもある豪華なレギュラー選手が並ぶ三菱ふそう、 控えも何人かまではそれなりにいい選手がいるのだが、黒川・池田らはその控えでも 下の方だろう。さすがに須田を相手に打てそうな気がしない。代打に次ぐ代打で選手も ほとんど使いきっている。案の定、三振した。はっきり言って出口が見えなく なってきている。両チーム、チャンスは作るが得点に結びつきそうな気配がない。 東芝は4番の伊勢が4番らしくなく、チャンスをつぶす。三菱ふそうの4番・ 西郷はかなりハイレベルな打者なのだがチャンスでまわれば歩かされてしまう。 銭場・須田と社会人トップレベルの投手が出てきているし、西郷以外に打てそうな気配もない。
14回が終了。時計はちょうど11時をさしたくらいだと思う。何やら大会関係者らしい オヤジが出てきて審判と話している。両チームもベンチ前に出てきて「なに?」 みたいなかんじで見ている。集合がかけられた。試合終了らしい。おそらくは 延長は14回までとか、5時間までとかそういうルールはないだろう。 流れた場内アナウンスは「試合開始から4時間50分がたっている。選手の体調管理のため 引き分け再試合とする」といった趣旨の内容だった。よくよく考えれば 理由になっているようでなっていない気がする。しかしおそらくはみんなどうでもよかった。 やっている選手も、見ている我々も、この試合を続けても点が入らなそうな 雰囲気を感じ始めていた。理由は何でもよかった。「仕切り直し」という結果が ほしかった。そんな気はする。双方よく戦ったと思う。全国の社会人野球の中でも 強豪が集まっていてレベルが高いと言われる神奈川県。その都市対抗野球敗者復活戦という、 「負けたら終わり。絶対に負けられない」という真剣勝負をこれだけ堪能できて うれしかった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 計 | |
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東芝 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
三菱ふそう川崎 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
C | 工藤△ | 三振 | 一飛 | 三振 | 右本 | 右安 | 二ゴ | 中安 | |||||||
D | 福田 | 三振 | 二ゴ | 三振 | 遊ゴ | 三振 | 中2 | 投犠 | |||||||
E | 平馬 | 左安 | 三振 | 右飛 | 三振 | 三振 | 捕犠 | 敬遠 | |||||||
H | 伊勢△ | 三振 | 右安 | 四球 | 三振 | 右飛 | 三振 | 三振 | |||||||
DH | 有銘 | 遊ゴ | 中飛 | 中安 | 遊直 | 遊安 | |||||||||
R→DH | 山地 | ||||||||||||||
H→DH | 佐藤 | 一ゴ | 三振 | ||||||||||||
F | 山本△ | 左安 | 二ゴ | 一邪 | 三振 | 三犠 | 捕邪 | ||||||||
A | 安田 | 遊ゴ失 | 遊安 | 一邪 | 三振 | 中安 | 中飛 | ||||||||
G | 結城 | 四球 | 捕バ安 | 二飛 | 三飛 | ||||||||||
8 | 横山 | 中飛 | 二ゴ | ||||||||||||
B | 石丸△ | 三振 | 右直 | 死球 | |||||||||||
H | 石垣 | 右飛 | |||||||||||||
3 | 松田 | 三振 | 中安 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
DH | 宮内△ | 中飛 | 死球 | 遊直 | 二ゴ | ||||||||||
H→DH | 桑元 | 三飛 | 二ゴ | ||||||||||||
H→DH | 池田 | 中飛 | 三振 | ||||||||||||
F8 | 中村 | 三振 | 左2 | 三振 | 左安 | 三振 | 中飛 | 二ゴ | |||||||
H | 梶山△ | 四球 | 右安 | 二ゴ | 二ゴ | 右飛 | 左安 | 左安 | |||||||
B | 西郷△ | 中安 | 死球 | 中安 | 四球 | 四球 | 中飛 | 四球 | |||||||
A | 高根澤 | 中飛 | 右安 | 遊ゴ | 三振 | 三振 | 四球 | 三振 | |||||||
C | 吉見△ | 二ゴ | 一ゴ | 左安 | 二直 | 三振 | 二飛 | 三振 | |||||||
D | 梅原 | 三振 | 三振 | 投犠 | 左安 | 右安 | 三振 | 右飛 | |||||||
E | 佐々木 | 三振 | 遊ゴ | 遊安 | 投犠 | 四球 | 三振 | 四球 | |||||||
G | 西澤 | 三振 | 二ゴ | 右飛 | |||||||||||
H | 小野△ | 四球 | |||||||||||||
R7 | 谷山 | 三振 | 二ゴ | ||||||||||||
H | 黒川 | 四球 | |||||||||||||
R | 新保△ |
無意味に熱い人たち
11時すぎに球場をあとにして帰路につく。業務を終えて一目散に横浜スタジアムに向かい、 午後6時から11時まで食事もとらずにスコアをつけながら試合を見ていた。 夕食をとらなければ。横浜駅西口の、よく利用する吉野屋に行くことを決める。 ところが横浜駅に着くと西口の相鉄交番付近でサッカーファンが大騒ぎしている。 騒いでいるのみならず、けっこうな人数で行く手がふさがれている。そして間の 悪いことに警察とのにらみ合いが始まったところのようだ(にらみ合いと言っても にらんでいるのは警察で、サッカーファンは騒いでいるだけでにらんではいない)。 こんなところにまぎれこんで逮捕でもされても困る。いっしょになって騒いでも いいという気持ちならばともかく、サッカーの日本代表の勝敗ごときにそれほど 思い入れもない。東芝と三菱ふそうの勝敗の方が大切である。 「俺の牛丼をどうしてくれるのか?」大きな憤りを感じながらここでは食事せずに 帰ってきた(結局、自宅の最寄り駅で食事)。
熱き戦いの結末
サッカーのワールドカップで世間が多いに盛り上がる中で、それとは別の「熱い戦い」を 見てきた。時を同じくして別の場所で、しかし別の場所ながらサッカー側の熱狂を 部分的には感じながら、別の熱い戦いに触れてきた。サッカーのワールドカップは 世界的に注目される行事であって、出場する人たちは国を背負って戦っており、 当然熱い戦いとなろう。かたや、たかが一企業の看板を背負って戦っている程度の 社会人野球チームの戦いは、一般人の興味をほとんど引かないかもしれない。 しかし、ここで「どちらの方が熱いか」という議論をするつもりはないが、 こちらはこちらで十分に熱い戦いをしている。そんなことを少しでも感じてもらえればと 思ってこの「ひとりごと」を書いてみた。これからも、少なくとも自分は気にかけていきたい。
さて、ここで取り上げた試合の後日談であるが、翌日に再試合が行われた。 当初は筆者は、とある大学野球連盟の入れ替え戦を観戦に行く予定だったのだが そちらが中止になったこともあり、結局またも横浜スタジアムに足を運んだ。 三菱ふそう・加藤、東芝・銭場が先発し、どちらもすばらしい投球を見せた。 しかし東芝がソロ本塁打で挙げた1点を、銭場から終盤に須田−香月とつなぐ リレーで三菱ふそう打線を1安打完封。金属バット時代に爆発的な攻撃力を 誇っていた三菱ふそうが木製バットに変わっても同じ野球を追い求め、 それが実らずに都市対抗野球本選出場を逃した瞬間を目の当たりにした。
もう少し後日談を続けると、この試合に勝った東芝は敗者復活3回戦で 日石三菱の前に1−0の試合を9回裏に無死満塁からの2点適時打でひっくり 返されてサヨナラ負け。日石三菱は敗者復活2回戦でも1点ビハインドを 9回裏の2点本塁打で逆転サヨナラ勝利しており、神がかり的な連続サヨナラで 勝ち進んだ。迎えた神奈川第2代表決定戦は日石三菱VSいすゞ自動車。 いすゞ自動車は今年限りでの休部(事実上の廃部)が決まっており、 有終の美を飾ろうと意気込んでいるチーム。観戦者としても「最後に勝たせて あげたい」の気持ちもわりとあるチームである(と少なくとも筆者は思う)。 この試合は日石三菱が2点リードで9回裏を迎えるもいすゞ自動車が佐伯真貴 (熊本工業高校出身)の2点本塁打で同点。4−4のまま延長戦に入ってこの延長戦は15回まで続いた。 15回表に日石三菱が1点を勝ち越すもその裏、佐伯の3点本塁打で逆転サヨナラ勝利。 熱すぎる。サヨナラがサヨナラを呼び、延長戦が延長戦を呼んだ。熱すぎる。
(山口陽三筆)