平成10年 東京新大学野球連盟2部春季リーグ戦

「国際大、投打かみ合い4季ぶりの優勝」
国際 農工 理科 日大 工学 駿河 得失点差
東京国際大 ---- ●○ ○○ ○○ ●○ ○○ 8 2 0 72 32 +40
東京農工大 ○● ---- ○△ ●● ○○ ○○ 6 3 1 63 45 +18
東京理科大 ●● ●△ ---- ○○ △● ○○ 4 4 2 31 35 -4
日大生物 ●● ○○ ●● ---- ○● ●○ 4 6 0 50 54 -4
工学院大 ○● ●● △○ ●○ ---- △● 3 5 2 36 55 -19
駿河台大 ●● ●● ●● ○● △○ ---- 2 7 1 27 58 -31
※今季の1部のリーグ戦を観戦しての筆者・山口の雑感を別のページに書いてます。興味がある方はどうぞ→こちら。やや危険...

※今季の入れ替え戦を観戦しての筆者・山口の雑感を別のページに書いてます。興味がある方はどうぞ→こちら。反論歓迎。

※今季の入れ替え戦第3戦、ある選手の1球に賭けた1打席に焦点を当てた筆者・山口の "ひとりごと" を別のページに書いています。 興味のある方はどうぞ→こちら。わりと自信作。


試合結果

4/4 ●日大生物 4-13 東京理科大○(7回コールド) ○東京農工大 9×-2 工学院大●(7回コールド)
4/5 ○東京国際大 8-0 駿河台大●(7回コールド) ○日大生物 9×-2 東京農工大●(8回コールド)
4/11 △東京理科大 1-1 工学院大△(延長11回引き分け) ○駿河台大 3-2 日大生物●
4/12 ○東京国際大 11-3 東京理科大●(7回コールド) ○東京農工大 6-4 駿河台大●
4/19 ○工学院大 5-2 東京国際大● ○東京理科大 2-0 駿河台大●
4/25 ●工学院大 4-15 東京農工大○(7回コールド) ●日大生物 6-8 東京国際大○
4/29 ●工学院大 3-5 日大生物○ ●東京国際大 2-9 東京農工大○(7回コールド)
5/2 ●駿河台大 0-12 東京国際大○(7回コールド) ●日大生物 4-7 工学院大○
5/3 ○工学院大 1-0 東京理科大● ●駿河台大 1-8 東京農工大○(7回コールド)
5/4 ●東京農工大 2-9 日大生物○(7回コールド) ●東京理科大 0-4 東京国際大○
5/5 △工学院大 7-7 駿河台大△(9回引き分け) ●東京理科大 0-9 東京農工大○(7回コールド)
5/9 ●駿河台大 1-6 東京理科大○ ○東京国際大 4-3 工学院大●
5/10 ○日大生物 4-3 駿河台大● △東京農工大 2-2 東京理科大△(延長12回引き分け)
5/16 ●東京農工大 1-12 東京国際大○(7回コールド) ○東京理科大 4-2 日大生物●
5/23 ●工学院大 3-8 駿河台大○ ○東京国際大 9-5 日大生物●


個人タイトル
首位打者
下嶋 由継(日大生.25)


32打数15安打 .469

最多本塁打
岩本 学(農工大.18)


33打数13安打 .394、6本塁打

最多打点
岩本 学(農工大.18)


33打数13安打 .394、16打点

最優秀出塁率
下嶋 由継(日大生.25)


32打数15安打12四死球、.614

最多盗塁
浅葉 直樹(日大生.27)


30打数12安打 .400、12盗塁

最多勝利
橋本 直弥(国際大.21)

川内 真之(国際大.18)


4勝0敗1S 防御率 1.65

4勝2敗1S 防御率 2.57

最優秀防御率
白坂 公一(理科大.22)


3勝2敗0S 防御率 0.56

最多奪三振
白坂 公一(理科大.22)


3勝2敗0S 奪三振 49


打撃成績 (規定打席数は、28-コールド勝利数)
打席 打数 打点 打率 出塁率 得点圏
1.下嶋 由継(日大生.25)△ 45 32 15 0 23 13 1 5 12 .469 .614 .550
2.佐々木 学(日大生.1)△ 47 36 15 0 18 2 0 2 11 .417 .553 .429
3.金子 毅(国際大.1) 40 30 12 2 20 12 5 6 5 .400 .472 .438
3.浅葉 直樹(日大生.27) 38 30 12 1 15 1 4 2 4 .400 .471 .200
3.野中 強(駿河台.32) 31 25 10 0 10 2 2 2 4 .400 .483 .273
6.天田 雅伸(国際大.2)△ 48 43 17 5 34 13 4 5 1 .395 .400 .545
7.岩本 学(農工大.18) 39 33 13 6 33 16 1 6 5 .394 .462 .455
8.佐藤 竜也(駿河台.10)△ 41 36 14 1 18 3 1 4 4 .389 .450 .400
9.高野 哲広(駿河台.5) 33 26 10 4 22 7 2 6 5 .385 .455 .143
9.山本 裕一(理科大.11) 32 26 10 1 13 7 1 3 5 .385 .484 .429
11.鬼沢 智宏(国際大.10) 37 26 9 2 17 8 0 2 11 .346 .541 .300
12.福地 泰典(国際大.9) 41 32 11 0 17 8 2 1 7 .344 .450 .500
13.信田 人(農工大.4) 45 37 12 0 15 7 4 6 4 .3243 .390 .294
14.中島 敬蔵(農工大.44) 40 34 11 1 17 8 0 5 6 .3235 .425 .357
15.塩見 誠(工学院.14)△ 34 28 9 1 13 5 0 3 4 .321 .406 .250


投手成績(規定投球回数は、28-コールド勝利数)
試合 S 投球回数 打者 防御率 被打率
1.白坂 公一(理科大.22) 7 3 2 0 64 259 47 1 49 16 11 4 0.56 .203
2.橋本 直弥(国際大.21)△ 7 4 0 1 32 2/3 140 28 1 26 16 13 6 1.65 .239
3.川内 真之(国際大.18)△ 7 4 2 1 42 182 36 2 17 27 19 12 2.57 .242
4.滝沢 直己(日大生.9)△ 10 3 3 1 52 1/3 218 52 4 21 18 26 18 3.10 .272
5.駒木 康祐(駿河台.60) 9 1 4 0 45 219 44 4 23 39 29 17 3.40 .262
6.岩本 学(農工大.18) 7 3 2 1 46 1/3 212 48 7 24 27 32 18 3.50 .271
7.岡川 貴光(工学院.18) 6 2 3 0 39 177 27 1 30 35 20 19 4.39 .197
8.芳賀 信之(駿河台.16) 6 1 3 0 28 144 27 0 13 36 25 15 4.82 .278
9.佐藤 嘉紀(工学院.17) 5 1 2 0 28 2/3 135 31 3 21 17 24 16 5.02 .272


入れ替え戦


平成10年6月13日 東京国際大学グランド 1・2部入れ替え戦第1戦
1 2 3 4 5 6 7
東京国際大(2部1位) 1 0 5 4 2 1 0 13
杏林大(1部6位) 0 0 1 0 0 1 0 2
(7回コールド)

4季ぶりの1部挑戦となった国際大と、昨季念願の1部昇格を果たしながら勝点0で最下位になった杏林大との対決は、リーグ戦の勢いをそのまま持ち込んだ形の国際大がまず大勝した。

国際は1回に石川敦の本塁打で先制すると、3回には敵失でつかんだ好機に天田・鬼沢・金子の適時打等で5点を追加し、杏林先発・新村をKO。4回にも代わった桑原から2本塁打で4点を追加した国際は、投げては先発の橋本が好投。大量点に守られる形で7回を2失点の好投。国際はリーグ戦終盤からの打線の好調さを持続させ、昨季2部の最優秀防御率を獲得した新村をKO。対する杏林は、投手陣が崩壊状態だった1部でのリーグ戦の悪い形を、こちらもまたそのまま持ち込んでしまった形となり、守備も3失策を喫するなど、1部校とは思えない惨敗を喫し、「2部逆戻り」が早くも背後に迫って来た。

平成10年6月20日 東京国際大学グランド 1・2部入れ替え戦第2戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9
杏林大(1部6位) 5 1 0 2 0 2 0 0 1 11
東京国際大(2部1位) 0 0 0 0 0 1 4 0 0 5

第1戦をコールドでものにして1部復帰へあと1歩と迫った国際大だったが、第2戦は一転、杏林大の打線に屈し、星を1勝1敗とした。

杏林は初回、国際先発・川内を攻め、先頭の小玉から大越・村上・山本正と、4連打で1点を先制。さらに無死満塁から甫坂に満塁本塁打が出て、この回5点。さらに杏林は2回には村上の適時打、4回には山本正の2点適時2塁打で加点し、川内をKO。投げては杏林が背水の陣で送り出した、経験の浅い張田が立ち上がりから好投。第1戦で13点を叩き出した国際打線を抑える。国際も、コールド目前の7回に、杏林2番手の渡部の3連続四球でもらった好機に荻原・天田の適時打等で4点を返したものの結局完敗。杏林は第1戦で繰り出す投手が次々につかまったものの、打線の大量援護をもらったこの日は先発の張田に加え、7回の危機に救援したエースの新村も好投。星を5分に戻して1部残留の望みをつないだ。一方の国際は、第1戦で好投した橋本を温存した形となったがこれが裏目。7季ぶりの1部復帰が目の前まで迫りながら、杏林に対していい雰囲気を与えてしまったうえで第3戦を戦うことになってしまった。

平成10年6月21日 東京国際大学グランド 1・2部入れ替え戦第3戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
東京国際大(2部1位) 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
杏林大(1部6位) 0 0 0 0 0 0 1 0 0
(延長10回サヨナラ)

1勝1敗で迎えた、かつての2部のライバル同士のこの対戦は、第1・2戦とはまたうってかわった展開となったが、若き救世主・張田の連日の好投で杏林大が辛くも1部残留を果たした。

国際は満を持して橋本を、杏林は連投とはなるが5投手の中でこの入れ替え戦で最も安定した投球をした張田を先発させてきたこの第3戦。両投手とも無難な立ち上がりを見せたが先制したのは国際。4回1死2塁の好機に、チーム内首位打者の金子の適時打で1点を先制。対する杏林は橋本から好機はつかみながら4回の2死満塁、5回の1死3塁を抑え込まれ、6回に連打で作った無死1.2塁の好機はバントファウル・牽制死・併殺打で逸機し、国際ベンチから「1部で何を習ってきたんだ〜!?」とヤジられる始末。しかし7回にようやく追いつく。橋本の連続四球とバントで作った1死2.3塁に小玉の犠飛で同点。しかしその同点もつかの間、8回に国際は張田の四球・バント処理失策でもらった好機を越智のバントで1死2.3塁と広げる。石川敦を敬遠した1死満塁で4番の鬼沢は捕邪飛。張田は自ら招いた危機もなんとか2死までこぎつけたものの続く金子にカウント0-3。杏林にとって絶体絶命の危機を迎えたものの、ここで金子はストライクを取りにきた4球目を叩く。しかし打球は遊撃正面をつき、無得点。息詰まる熱戦は両投手の好投で投手戦となり、両チーム決め手を欠いたまま延長へ。そして延長10回、張田の好投に捕手の大越が応えた。橋本のカーブをうまく拾い、右翼への大きな当たり。右翼手・荻原が一瞬つかんだかのようにも見えたが打球は狭い国際グランドの右翼ネットを辛うじて超えてサヨナラ。3時間を超す熱戦は、劇的な形で決着がつき、あと1歩と迫っていたように見えた国際の1部復帰はとりあえず見送られる結果となった。

杏林大は第1戦でエースの新村をはじめ、桑原・渡辺と、繰り出す投手がそれぞれに打ち込まれる最悪のスタート。しかしこの窮地で、大きなプレッシャーを背負って第2戦に先発したと思われる、2部での実績もほとんどない2年生投手・張田が2勝を挙げる好投。昇格直後の転落を辛うじて免れた。一方、第1戦をリーグ戦の勢いそのままで大勝し、7季ぶりの1部復帰にかなり近づいたと思われた国際大は、第2戦の大敗で雰囲気を失ったのか、苦手の杏林大に連敗を喫し、1部復帰はひとまずおあずけとなった。


平成10年6月20日 東京国際大学グランド 2・3部入れ替え戦第1戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9
東京都立大(3部1位) 1 0 0 1 1 0 0 0 0 3
駿河台大(2部6位) 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2

昨季の入れ替え戦と同じ顔合せとなったこの対戦、9勝1分で3季連続となる3部優勝を飾った都立大が、入れ替え戦6連勝中の駿河台大にまず先勝し、5季ぶりの2部復帰に王手をかけた。

都立は1回に谷本の適時2塁打で1点を先制。その後2回の1死3塁、3回の1死1.2塁を生かせずにいたが、4回に四球と盗塁でつかんだ好機に石川のスクイズで、結局無安打で2点目を挙げる。さらに5回には谷本のソロ本塁打で1点を追加し、都立が試合を優位に進める。一方の駿河台は、都立先発・市川の前に5回まで1安打と抑えられていたが、6回に連打で作った好機に高野・小玉の連続適時打で1点差に詰める。しかしこのあと市川が耐えた。昨季の入れ替え戦で四球連発でKOされた汚名を晴らす粘投を見せ、1点差で逃げ切り。都立は3部でのリーグ戦を無敗で乗り切ったチームらしく、少ない安打ながらソツなく点を取り、辛勝。昨秋の入れ替え戦でKOを食らった市川が好投し、昨春の入れ替え戦では三振を重ねてまったくいいところのなかった谷本が2打点を挙げるなど、都立にとっては意味深い勝利となった。一方の駿河台はエースの駒木がふだんよりだいぶ四死球も少なく、安打も4本に抑える好投を見せはしたものの打線が6回以外は市川に抑え込まれ、1点差で惜敗。12季ぶりの3部転落がやや近づいてきた。

平成10年6月21日 東京国際大学グランド 2・3部入れ替え戦第2戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9
駿河台大(2部6位) 3 0 0 0 3 1 4 0 1 12
東京都立大(3部1位) 2 0 1 0 0 0 3 1 1 8

エースの駒木で第1戦を落とし、あとがない駿河台大だったが、上村-堀田の1年生リレーを打線が援護し、星を5分に戻した。

駿河台は1回、昨季の入れ替え戦で打ち込んだ都立先発・中村を攻め、高野の犠飛と中岡の2点適時打で3点を先制。しかしその裏都立も相手の3失策から2点を返し、立ち上がりから点の取り合いの様相。3回に都立が無死1.2塁からの連続併殺崩れで同点としたが5回に駿河台は、1死1.2塁の好機に、好機に弱かった南の適時打で勝ち越し。さらに中村がたて続けにバント処理を失策し、この回で駿河台は3点をリード。6回には都立2番手の壇から1点、7回にも壇、そして第1戦完投勝利を収めた市川から計4点を奪い、8点をリード。都立もコールド目前の7回、2死無走者から満塁の好機を作り、船田の走者一掃の適時2塁打で3点を返すも、結局中盤の失点が大きく、駿河台がなんとか逃げ切り。両チーム失策や四死球が多く、しまらない試合とはなったがともかく駿河台は星を5分に戻し、来週の第3戦に2部残留の望みをつないだ。

平成10年6月27日 東京国際大学グランド 2・3部入れ替え戦第3戦
1 2 3 4 5 6 7
東京都立大(3部1位) 0 1 0 0 0 0 0 1
駿河台大(2部6位) 4 1 1 0 0 2 × 8
(7回コールド)

4月3日の開会式から3ヶ月が経とうとしているこの時期にようやく決着がついた2・3部の入れ替え戦は、駿河台大が2季連続で都立大の挑戦を退ける結果となった。

都立・市川、駿河台・駒木と、両チーム予想通りの先発投手を立てたこの試合だが、内容は対照的だった。駿河台は1回に市川の死球・失策でもらった1死2.3塁の好機に高野の適時打で先制。さらに続く南が、おそらく自身初となる本塁打を中堅にたたき込み、初回で4点を先制。都立も2回に、この入れ替え戦で当たっていなかった4番・奥原の本塁打で1点を返すも、駿河台は2回に清家の本塁打、3回に中岡の適時打で加点。駿河台先発の駒木はいつもは不安定な立ち上がりもなんとか乗り切り、7回で10三振を奪う余裕の完投勝利。球審の広いストライクゾーンをうまく使った、捕手の高野の配球も冴えた。一方の都立大は、第1戦で粘りの投球を見せ、1勝を挙げたエースの市川が本当に大事なこの1戦で結局は無惨なKO。打線は駒木のストライクを見逃し、ボールを振るという工夫のない攻撃で散発4安打。2部昇格がかなり近づいてきたかと、本人たちも思っていたであろうこのシーズンに、結局またも2部昇格はおあずけとなってしまった。

駿河台大は、第1戦を接戦の末に落としたものの第2戦をとったあとのこの第3戦は、状況は互角にも関わらず心理的に優位に立てたように見え、2部残留。加盟以来4度の入れ替え戦を、3部昇格、2部昇格、2部残留、2部残留、として、またも入れ替え戦での強さを見せた。対する都立大は、昨春から3季連続で圧倒的に3部を制し、今季は無敗で3部を制して入れ替え戦に挑んだものの1歩及ばず。入れ替え戦の常連となってきている都立大ではあるが、なんとなく入れ替え戦を苦手とするような雰囲気ができつつある。


今季の展望

(シーズン前に書いたものです。はずれても知りません。)

平成7年春に、それまで圧倒的な強さを誇って5季連続優勝を果たした工学院大が1部昇格。その工学院大に隠れて「万年2位」だった杏林大も平成7年秋・8年秋・9年秋と優勝を飾り、昨季ついに1部昇格。今季は杏林大に代わって転落した日本大学生物資源科学部や、平成9年春に2部に逆戻りしてしまった工学院大らを中心に優勝争いが展開されていきそうだが、東京国際大・東京理科大等も巻き込んでわりと混戦となりそうな予感がする。

また、今季の特徴としては、どのチームも投手中心の、比較的似た野球を展開してくるのではないかということがあげられる。今季はほとんどのチームが計算できる投手を複数持っており、昨季からの投手の戦力抜けも少ない。反面、ここ数年野手の全体的なレベルはやや下降傾向にあるため、どこも頼れる投手を前面に押し出した似たような戦いを展開し、接戦続きのリーグ戦となることが予想される。投手を中心に各チームの今季の展望をさぐってみた。

久しぶりの2部転落となる日本大学生物資源科学部(前農獣医学部。以下「日大」。多分22季ぶりの2部)は、昨季の杏林大との入れ替え戦ではいいところなく2敗を喫してしまった。ただ、全国の野球の強い付属高校から毎年のように部員が入部しているようで、選手個々の実力から言えば2部ではトップレベルであろう。投手は、右の本格派の石井盛男(3年生、佐野日大高校出身)を中心に左の古川(2年生?)・浜野善宏(3年生、日大二高出身)らもおり、質・量ともに2部で戦っていくには十分であろう。守備も1部では一度崩れ出すと連鎖的な失策を犯す癖は見られたものの、特に守備が堅いチームが見られない今の2部の中では十分堅い方であると思われる。信頼できる防御面を前面に押し出した戦いで、難しいと言われる ``転落直後の優勝''(2部では平成9年秋に工学院大、平成7年秋に東京国際大、平成1年秋に日本工業大が、3部では平成9年春に東京外国語大、平成8年秋に東京都立大、平成7年秋に帝京科学大、平成7年春に日本工業大、平成6年春に東京農工大、平成5年秋に東京都立大、平成5年春に国際基督教大がいずれも失敗している)を達成することができるかどうかが注目される。

工学院大は、2部転落後最初のシーズンとなった昨季は退部者や故障者が出てしまい、4勝5敗1分の3位に終わってしまった。ある意味不運なシーズンとなってしまった昨季だが今季は建て直しが予想される。投の2本柱の岡川貴光・佐藤嘉紀(どちらも3年生、工学院大学附属高校出身)は、昨季は岡川は故障で戦線離脱、佐藤はそれで無理がかかったような投球になってしまったが、本来ならばどちらも計算できる投手なので、両投手の疲労や故障がなければ今季の工学院大はそう崩れることはないだろう。1部復帰、とまでは何とも言えないが2部優勝は十分可能である。捕手にも昨季全盛時からの衰えが目立っていた伊藤正志(前4年生、工学院大学附属高校出身)に代わって、故障していた串田純史(3年生、工学院大学附属高校出身)が復帰するであろうし、二遊間も昨季は失策が少なく、守備は堅そうだ。攻撃の方は、塩見誠(3年生、工学院大学附属高校出身)の長打力、そして昨季打率・本塁打の2冠を獲得した鈴木祐司(4年生、大宮北高校出身)の打撃がやはり目立つが、本来得意な、バントを軸とした堅実な攻撃を展開できれば相手にとってより脅威になろう。

東京国際大は昨季5勝止まり(4敗1分)に終わりはしたが杏林大と優勝争いを展開。平成7年の2部転落以来、この杏林大にだけは3勝7敗と分が悪かったが、その「天敵」が形はどうあれ消えたことでこのチームにも優勝のチャンスがふくらんできたかもしれない。昨季から大した戦力抜けもない。投手は川内真之(4年生、徳島城南高校出身)と橋本直弥(3年生、坂戸高校出身)の2人の左投手が中心。川内の方は一時ほどの球の威力や切れはなくなってきたかもしれないが橋本の方は安定している。どちらも先発・リリーフに対応でき、また、長島紘太(2年生、東農大三高出身)という左の中継ぎ投手もいる。この投手も短いイニングならおもしろそうな存在である。昨季就任した新井監督は昨季のシーズンでの継投に関してはほとんど裏目に出ておらず、その投手の見極めは有効な戦力になる。一方の野手の方は目立つ選手が少ないが、攻守ともに抜群のセンスを見せる天田雅伸(2年生、佼成学園高校出身)のプレーには筆者個人的には大いに注目である。リードオフマンとして、守りの中心として今季も大きな戦力になるだろうし、今後に向けての無限の可能性を感じている。

東京理科大は今年2年生になる学年に実力のある選手が多いらしく、今年は昨年以上の戦いが期待できる。その中でもカギを握るのはやはりエースの白坂公一(2年生、仙台第一高校出身)だろう。昨季は8試合に登板して4勝を挙げ、最多勝と最多奪三振の2冠を獲得。持ち球の直球とスライダーに威力があり、ピンチで動じることもない。川野辺篤・新村正憲(いずれも杏林大。川野辺は今春卒業)なき今、安定感で2部No.1だろう。しかしこのチームの場合にはその白坂をサポートする2番手以下の投手が課題である。かつて杏林大が井澤俊介(作新学院高校出身で平成9年卒業、筆者の同期にあたる)という投手ほとんど一人で優勝したこともあったが、やはり計算できる投手が複数ほしい。倉田晃文(3年生、国分寺高校出身)・白井憲一(3年生、日大習志野高校出身)あたりがどれだけ白坂をサポートできるかがポイントになりそうだ。野手の方は戦力抜けも思ったより少ないようで、昨季と同程度の戦力は保てるだろう。打線がやや非力な印象はあるものの岡田康裕(4年生、大宮高校出身)らの足を使った攻撃でうまく点を取って白坂の投球で逃げ切る形の野球は可能だろう。

東京農工大は戦力抜けの人数は少ないものの相変わらずの部員不足。ただ、投打に中心となる中島敬蔵(4年生、飯田高校出身)、昨季安定した投球を続けた岩本学(3年生、鳥取西高校出身)、左の技巧派・柏井伸二(2年生、土佐高校出身)の3投手をうまく使うことができれば浮上のチャンスも出てこよう。また、昨季2部昇格以来10季目にして初の最下位を味わってしまった駿河台大は、他チームに比べて苦しい戦いにはなるかもしれないが、昨年1年間フルに投げ続けた駒木康祐(4年生、沼津城北高校出身)は要注意の存在である。特別特徴のある投手ではないが非常にタフな印象がある。ピンチでも特に投球が変わることもなく、連投でも同じような投球ができる。他チームの「エース」に比べれば実力的には落ちるが、長身の芳賀信之(2年生、春日部共栄高校出身)、安定感は最も高い小玉典宏(2年生、成田高校出身)らがサポートする体制はできており、相手にとって非常に戦いにくいチームになりそうだ。打線の方は昨季の本塁打王・高野哲広(4年生、駿台甲府高校出身)の打撃に期待はかかるが、もう一つ二つ得点パターンがほしい。


以下、余談にはなるが筆者は平成7年から2部のリーグ戦を毎試合のように見てきた。当時筆者は3年生。2年次(平成6年)はチーム(東京農工大)が3部だったために2部のリーグ戦には関われず、よって本格的に試合観戦・チーム分析を2部で始めたのは平成7年ということになる。それから4年目の春を迎える。つまり当時入学した1年生が早くも4年生となる。また、他チームの選手で1年生から4年生まで見るのも筆者としては初めてになる。そういう意味で今年は1年生のときから見てきた4年生の、最後の年に賭けるプレーに注目してみたい。自分のチームで言えば中島敬蔵、他チームでは繁田光平(理科大)、佐藤竜也・高野哲広(以上駿河台大)、村上貴洋・山本正・渡部真弘(以上杏林大、1部だが)あたりのプレーにささやかながら期待したい。


このシーズンの農工大の戦績の詳細は こちら

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