スローでハードな九州大返し

1泊4日5試合2000km

(山口陽三筆)

その昔、羽柴秀吉が明智光秀を討った「中国大返し」にあって羽柴軍は200kmの 全行程を5日間で移動したと言われる。交通網が発達した現代において200kmを 移動するのに5日もかからない。また、筆者自身も秀吉にそれほど傾倒しているわけでもないが、 このたび、関東から九州に移動して徐々に東上する「野球旅行」を実践した。 昨今の経済状況の悪化が個人の財布にもいささか影響し始めている折、 交通費・宿泊費を抑えて移動してみようと試みた。メインの移動手段に、 移動と宿泊を兼ねられる高速夜行バスを利用した。 ちなみに合計4日間で約2000km強を移動したことになるらしく、 うち1300km程度は新幹線・飛行機ではない低速な移動手段になった。

7月29日(水) 7月30日(木) 7月31日(金) 8月1日(土)
6:00 広島着(高速バス) 起床
旧広島市民球場 広島発(JR)
7:00 広島城
広陵高校*7
8:00
原爆ドーム*6
9:00 中庄着
高校野球広島決勝
(広陵 VS 如水館)
マツダスタジアム
*7
倉敷マスカット
スタジアム*10
10:00 東岡山着
岡山城東高校*11
11:00 岡山発(新幹線)
天神着
12:00
昼食(お好み焼き) 新大阪着
昼食(ラーメン)
13:00 広島駅からバス 舞洲着
唐人町へ
高校野球大阪決勝
(PL学園 VS 関大北陽)
舞洲ベースボール
スタジアム
*12
14:00 福岡ドーム*2 広島商業高校*8
唐人町発
15:00 博多→西小倉(JR) 広島駅に戻る 舞洲→西九条(バス)
チェックイン・風呂
16:00 小倉高校*3
西小倉→香春口三萩野 ホテルを出る
17:00 四国・九州アイランドリーグ
(福岡RW VS 高知FD)
北九州市民球場
*4
プロ野球
(広島 VS 横浜)
マツダスタジアム
*9
住之江公園着
夕食
関西独立リーグ
(大阪GV VS 紀州R)
住之江公園野球場
*13
18:00
19:00
20:00
住之江公園→新大阪
21:00 新宿発(高速バス) 香春口三萩野→小倉 新大阪発(新幹線)
*1 夕食(ラーメン)
22:00 小倉→中谷(バス)*5 夕食
中谷→小倉南インター(徒歩)*5
23:00 小倉南インター発
(高速バス)
*5
就寝 帰宅

いくつか一人旅の経験はあり、テーマや目的は一応それぞれではあるのだが、 今回は完全に野球の旅にしてみようと思った。興味のある野球の試合、球場、 高校をとにかく見てまわる。今年開場となった広島のマツダ ZOOM ZOOM スタジアムと、 今年始まった関西独立リーグに興味があり、今回はそれを軸に旅をした。 旅といえば野球の他に、「その地のおいしいものを食べる」「海や城を見る」 などの興味もあるのだが、今回は野球だけにしぼった。 実は3年ほど前から「行った球場リスト」 「訪れた甲子園出場校」のリストを個人ホームページで作成している。 もともとは、たまたま行ったことがあるところをリストアップしてみようと 思って始めたもので、並べてみたらけっこうな数があったというノリであった。 だから、今回リストの数を増やすためにあちこちを巡るというような旅に出ることは、 もともとのリスト作成の趣旨からは少しはずれている。まあでも、単純に 「見てみたい」という興味はそれとしてあるので、出かけてみた。


14時間のバス

費用を抑えるのはいいのだが、出発がいきなり試練だった。21時新宿発の 高速バスは、夜中、一路西へ走り、到着が翌朝11時すぎ。高速バスを利用することは 少なくない筆者だが、たいてい夜に出発して翌朝早くに着くもので(距離によっては 電車が走り始めていないくらいの早朝)、12時間を越えて同じバス車内に い続けるというのは想像がつかなかった。

20時半まで新宿でビール。酔ってそのままぐっすり、とはいかずに何度か足を 組み替えたりしたものの、ある時間からあとはわりと寝られたような印象。 8時ごろ山口県のインターに降りる。ハミガキと洗顔。 カーテンが開き、ペットボトルとSoyJoyが配られ、かじる。 時間的にはまだ寝ても大丈夫ではあったがそんなに眠くない。かといって 窓の外やモニター画面をながめていても、そんなに退屈しない。 土砂崩れによる通行止めなども特になく(少し混雑した箇所はあったらしい) 11時すぎの天神到着。悪くない旅だった。


埋立地の野球場

博多でラーメンならば、屋台で「長濱ラーメン」を食べるべき。 所属するクラブチームの、福岡県出身の後輩Nからそう聞かされていたが、昼には屋台は出ていない。 「屋台風」とうたっているふつうのラーメン店に入ってみたが、逆にラーメン 専門というよりはチャーハンや定食もやっているようで、失敗。 ラーメンも、特別な感情はなかった。

地下鉄「唐人町」駅に移動して徒歩で福岡ドームへ。それほど遠くはなく、 かんかん照りでもないのだが、蒸し暑く、着くころにはけっこう汗をかいている。 最寄り駅から15分。ホークスタウンとしてグッズ店・フットサル場・ホテルなど いろいろな施設が球場周りにはあるが、駅周辺や駅から球場への間はあまり店がない。 プロ野球の球場に行くにしては、少し異質なかんじも。また、海が近い。 おそらくは埋め立て地に球場を作ったようなかんじだろう。千葉マリンスタジアムも 海に近いし、思えば平成元年の横浜博のあとには、埋め立て地であるみなとみらい地区に ドーム球場を作るという話が浮上したことがある(そして立ち消えになった)のも思い出した。 埋め立て地に野球場を建設することはよくあることなのかもしれない。 ただ、そうは言っても野球場建設がうまく進まなかったりいろいろな 思惑が絡んでできるまで時間がかかったりすることもままある(ex:今回訪れる予定のマツダスタジアム)。 福岡ドームが海のそばにあるということだけで、いろいろなことが頭を巡った。


(福岡ドーム前で)

球場までは、普通の住宅街を抜けていくような道筋だが、やはり球場が近づいてくると 自分の気分は高揚してくる。自然に鼻歌など。球場に着いてみると、やはり風が強い。 海が近いせいなのだろう。ソフトバンクのグッズを買って早々にあとにした。

街中のタクシー 地元FMラジオの宣伝も
遠目から球場を 手前がホークスタウン
球場周辺-1 風強い
球場周辺-2 海近い


古豪の伝統、小倉高校

博多から小倉は新幹線ならば20分程度というがJRの快速で移動。 汗だくで着替えたいと思ってかばんの中を見るとTシャツをほんの少ししか詰めていない ことに気づく。忘れた。しかたない、独立リーグのTシャツを買って途中から着るか。

Nの母校・小倉高校。高校野球ファンならばこの高校はすごいということを たぶん知っている。昭和20年代に夏の甲子園で2年連続優勝(連覇)を成し遂げている。 これは数年前に駒大苫小牧高校が連覇するまでの、最も直近の記録であった。 小倉高校以後、50年以上にわたって夏の甲子園連覇の高校が出ていなかった。 また、連覇のあとの春だか夏だかに、甲子園で負けたときにエースだか誰だかが 砂をポケットに入れて持ち帰り、この出来事が発端となって現在にいたって負けたチームが 甲子園の砂を持ち帰る風習が確立(?)されている。そういった、高校野球を語るうえで 欠かせない高校なのだが、高校野球マニアではない筆者は、恥ずかしながらNに聞かされるまで そのあたりのことは知らなかった。

知ったうえで訪れてみると、なるほど伝統の重みみたいなものを感じるグラウンドだ。 内野は黒土、外野は芝ではない。ベンチ、ブルペン、バックネット、ちょっとしたスタンドなど そろえられ、施設として古そうではあるが十分とも感じる。ちょうど練習中。 1ヶ所打撃で監督がキャッチャーの後ろにネットを張って座り、ワンプレーに細かく指示を出す。 そうは言っても今年の夏は福岡県大会初戦敗退、というのは知っていたが、 なるほどしっかり練習している。

西小倉駅から往復してくれたタクシーの運転手からもいい話を聞けた。 小倉高校は北九州地区ではNo.1の進学校だという。福岡全体でも修猷館に次いで2番手だろうと言う。 有名国公立大学への進学も多い。 運転手さんも子どものころ、小倉高校があこがれで、入りたい学校だったとのこと。 昔のこととは言え、それで野球も強かったのだからすごい。小倉高校は 地元ではすごいステータスを持ったところなんだと、あらためて確認した。


がんばりすぎない、アイランドリーグ

西小倉駅から小倉駅に行き、モノレールに乗り換えて香春口三萩野駅へ。 これが「かわらぐちみはぎの」と読むらしい。これは大変だ、読めない。 原を「ばる」と読んだり、春を「わら(はら?)」と読んだり、九州はなかなか大変だ。

香春口三萩野駅から歩いて15分弱。北九州市民球場へ。近くに広場やドームがあり、 そちらかとも思わせるが、道を挟んでまったく違う施設として球場が。 街中にいきなり出てきた。確かプロ野球を開催することもあった気がするが、 スタンドにしろ球場周辺にしろ、プロ野球を開催するにはちょっと設備が乏しい感がある。

試合は四国・九州アイランドリーグの福岡レッドワーブラーズVS高知ファイティングドッグス。 四国アイランドリーグは初年度の平成17年に観戦していたが、5年目を迎えたこの時期に どうなのか、再確認といった意味合いで見たいと思っていた。また、福岡は4年前には なかったチームだし、高知は4年前に唯一見られなかったチームでもあり、ちょうどよかった (もっとも、独立リーグは1年でメンバーも大きく変わり、4年前にいた選手などほとんど 残っていないだろうから、4年前に見たか見ないかはあまり関係がない)。 平日木曜日の小倉でのナイターということで仕方ないのだろうが、発表された観客数が157人。 いやあ、閑散としていた。


(左:試合風景。右:閑散とする試合前のスタンド)

思うに、おそらく関西独立リーグもそうだが、四国のリーグや北信越のリーグと比べて 厳しいのは、同県にプロ野球(NPB)チームがあることだ。例えばこの日にしても、 同じく18時試合開始で、福岡ドームでソフトバンクホークスVSオリックスバファローズの 試合が開催されている。福岡ドームに寄るプランを持っていた筆者も、同じ時間に別の場所で 試合が行われていることを少し残念に思ったが、普通に考えてどちらの試合を見に行くかと 考えれば、福岡ドームでのソフトバンクの試合を見に行くだろう。仕方ないと言えば仕方ない。

そんなこともあってか、野球のレベルの方もなんとなくさびしげ。4年前と比べて、レベルは落ちていない。 むしろ4年前に打撃が貧弱と感じたことを考えれば、打撃のレベルは少し上がっているかもしれない。 投手・守備のレベルは別に落ちていない。ただ、プロ野球の世界に飛び込んでいきそうな、 飛びぬけた存在には出会えなかったかんじだ。大学で同じ連盟出身の、高知のYAMASHINが 3安打と活躍してくれたのはうれしかったが、プロ入りはなかなか難しいだろう。 福岡の先発投手・森はなかなか球が速いと感じたがスピードガンの電光掲示は135km/h程度。 最前列で観戦して距離が近いから速く感じたのかな...? なんとなくスピードガンが当てにならない気も。 高知の4番にはカラバイヨというでかい外人、先発投手はジョン。外国人も積極的に入れている。 高知は後に伊良部獲得のニュースでも注目された。 プロを目指す場というよりは、ここはここで独自の世界を形成し始めている、と、 そんな風にも思った。ある意味では身の丈にあった運営をしている、のかもしれない。

平成21年7月30日 北九州市民球場
1 2 3 4 5 6 7 8 9
高知ファイティングドッグス 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
福岡レッドワーブラーズ 0 1 0 0 1 1 0 0 × 3

観客が少ないから仕方ない部分もあるし、今日だけのことかもしれないが、ファンサービスも 過度なものはなかった。地元の協力者の始球式、5回終了時に写真撮影、試合終了後に 球場外で整列...くらいか。福岡が勝利してヒーローインタビューもあった。 ホームランを打った中村選手と、左の中継ぎでピンチを抑えた大澤選手が呼ばれた。 この大澤という選手が呼ばれたのはうれしかった。記録上の勝利投手でもセーブでもないが、 7回表の1死1,2塁から拙守で1点取られたあとのピンチで3・4番を抑えた投球は見事。 ちゃんと見てヒーローを選んでいるあたりは、負け試合のうえ4打数1安打程度の選手を むりやりインタビューにかつぎだした、福井での北信越BCリーグとはえらい違いだ。 BCリーグとの比較で言えば、確かにファンサービスも少なく観客も少なくはあったが、 メジャーな外食産業の力を借り、もしかして何%かはそのおかげで観客が増え、 かといって試合中に当該企業の名前を連呼していたBCリーグの光景と比べて、 盛り上がりの面で果たして劣るかと言えば、一概にそうも言えない。

広報 "ISLANDER" モノレール社内で自由に取れる
ポスター 球場内にて。「夢は叶う」
隣のメディアドーム これが球場というわけではありません
球場外観および遠征バス
試合前ノック
応援準備のファン 少...
球場風景 試合前の静けさ
どっちみち静か...?
スタメン発表
始球式
当選者が写真撮影
(ファンサービス)
森山監督とともに
マスコットキャラクター 赤いウグイス。わりとかわいい。
勝利のハイタッチ
ヒーローインタビュー 大澤選手・中村選手
球場外でお見送り


綱渡りの継投、小倉南インター

今回の格安移動の中で、最も恐かったのがここだ。

福岡から広島への移動は、高速バスがそこそこあり、4時間くらいで運んでくれる。 しかし大半は朝や昼の走行で、そうなるとこの日に福岡に宿泊しないといけない。 この宿泊費を浮かすために、連夜の高速夜行バス泊を試みた。

小倉南と聞いて小倉駅南口だろうくらいの気持ちでいたら、とんでもない。 高速道路の小倉南インターは、小倉駅から遠く離れている。事前にバス会社に問い合わせ、 小倉駅から中谷というバス停(終点)まで乗って歩いて移動することができるという。 中谷バス停と小倉南インターのあたりが載っている地図もバス会社のホームページから 印刷することができた。ただし縮尺がなくて、遠いようにも見えるし近いようにも見える。 微妙ではあった。

中谷バス停で降りるときにバスの運転手に確認。結果的にはここでの確認に大いに助けられた。 「あそこにぼんやりと明かりがありますよね。あれが高速道路上の小倉南インターのバス停なんですよ。 辺りは真っ暗ですけど。いやいや、遠くはないですよ。」その明かりが目的地だと 教えてもらえてまず助かった。そして地図を見せると、だいぶアバウトで、 最初の曲がり角までの距離が実際よりだいぶ長く描かれていることを教えてくれた。 地図を信じて歩き始めていたら、曲がるべきところを通り過ぎて到着できなかったかもしれない。 ようやく歩き始めると、確かにすぐの曲がり角で「小倉南インターはこちら」みたいな 看板も立っているのだが、これは見えなくても仕方ないくらい真っ暗。田んぼの中みたいな 細い道を心細く歩いて行き、ようやく高速道路に上がる階段を見つける。よかった。

22:50ごろ無事小倉南インターバス停には到着できたが、周囲には何もない。 インターと言っても駐車場や休憩所や自動販売機があるわけでもなく、ただのバス停だ。 23:24出発というが何かの都合でバスが来なかったら、こんな僻地からどこにも移動できず、 夜が明けるまで田んぼの中で過ごさなければならない。今日中に広島に移動できなければ その後のプランも大きく崩れる。そもそも筆者1名が乗車するという 情報は本当に間違いなく、バス運転手に伝わっているだろうか。遺伝ゆえか、無用な心配を いくらでも作ることができる。


(小倉南インターにて。真っ暗な中の自分)

やることがないので、このバスを利用する人はどんな人なのだろうかと考えてみた。 博多を出発して小倉を経由して広島・福山に向かうバス。大きな地方都市なので双方の 都市に用がある人はそれなりにいるだろう。ただしその移動に高速バスを使うとなると、 経済的に苦しい人か、相当のバス好きか。ましてや夜に福岡を出て朝の6時には広島に着く。 6時に広島で用がある人とはどういう人か。出稼ぎの社会人や下宿の学生が実家に戻るという ケースはあるかもしれないが、金曜日ならまだしも木曜日の夜である。大学生にしても、 まだ夏休みには早く、テスト期間くらいの時期だろう。いったい誰が乗っているのか。 そんなことを考えていたら、バスはまちがいなく来てくれた。乗客は5人くらい。 2人組の女子学生と、ひとり者の若者が2人、あとオヤジが1人いた。格安旅行か お金を節約したい学生の帰省か...。逆に高速道路から乗った筆者は何に見えたんだ?

父が生まれ、8歳までを過ごしたという北九州をあとにした。別段、父の出身地だからという理由で 感慨にふけることはなかった。


被爆と水

6時の広島県庁前到着。旧広島市民球場・広島城・原爆ドームなどを見た。広島には平成9年の一人旅(初めての一人旅であり、 一人旅の趣味はそこから始まったと言える)で1度来ていたが、毛利元就に傾倒していて その関連の箇所を中心にまわり、広島駅周辺の観光はしていなかった。広島城をポツポツ歩く。 濠が大きくてゆったり水が流れる。原爆ドームは、原爆が落ちても形がわかる程度に 残ったという建造物。あたり一帯が公園になっており、池・川・千羽鶴・石碑などなど。


(左:広島城。右:廣島護国神社)

(左:広島城の濠。右:原爆ドーム)

印象的だったのは、水がそこここに見られること。広島城の濠でもそうだし、 平和記念公園の中もそうだが、水の流れがきれいに造られている。 水質そのものがきれいかどうかは知らないが、なんというか、水の流れというか たたずまいが静かできれいだ。被爆した際にものすごい高熱で、あるいは火傷を受け、 被害者は水を欲しただろう。その魂を鎮めるがごとく、ここにこれだけ水がありますよ、 と静かなる主張をしているとも受け取れる。長崎が被爆地に、平和記念像というとてつもないものを 作り上げて自らの主張を表したのには驚かされたが、広島の水のたたずまいは、 これはこれで静かなる主張を感じ、考えさせられもする。

「安らかにお眠りください。過ちは繰り返しませんから。」

そう心の中で話しかけた。筆者一人くらいで何ができるものでもないかもしれないが。 旅から帰ってくると選挙を前にある政党のビラが投函されており「憲法9条を改正し 他国が核兵器を持ち出すならその拠点を攻撃する」みたいな主張が唱えられている。 安心ください。あなたの党には投票しませんから。

旧広島市民球場-1 正面入り口
旧広島市民球場-2 記念モニュメント
旧広島市民球場-3 バックスクリーン裏側
城と俺
濠と俺
噴水
原爆ドーム 説明ボード入り
静かな川の流れ
戦没学徒出身校の碑 神奈川からも


がんばれKORYO

広島城と平和記念公園の間、朝の7時半〜8時半の間くらいで、広陵高校の野球部グラウンドを見に行っていた。 広島県内の強豪高校の一つ。2年前には夏の甲子園で全国優勝してもおかしくない ところまでいったが不遇の判定の末に逆転満塁ホームランを浴びて佐賀北に 優勝をさらわれてしまったチームだ。「広島で野球が強いところと言えば?」と 考えても思いつくし、もう一つ大きな理由として、筆者の出身校(神奈川県立光陵高校)と 「こうりょう」の読みがいっしょだった。高校生のとき、まったく関係ないのに 甲子園で「KORYO」のユニホームが活躍するのがなんとなくうれしかったものである。

グラウンドが学校構内にあることはインターネットで把握済み。最寄り駅から 坂は上るがそんなに遠くなかった。西門だかから入るとすぐに野球場。 これは野球専用グラウンド。雰囲気は星稜高校に似ている。 バックネット、観戦席、得点板、ブルペン、室内練習場と、 施設も申し分ないが地面としては外野が芝というわけでもなく、小倉高校と 同じようなかんじか。また、広さが両翼92m、中堅116mくらいなのももったいない。 もう少し広く造れた気もするのだが。グラウンドの周囲には年ごとの卒業生名が 彫られた石碑が並べて植えられている。遊学館高校で見たようなものだが、 歴史としては広陵が先だから、もしかして遊学館の石碑は広陵を参考にしたのかもしれない。


(外野の地面は普通(?)。球場外周に石碑、ファールグラウンドにブルペン、ライト奥に室内練習場)

(ベンチ・照明・本部席・バックネット。ベンチ上では観戦できる石段も。)

広陵からは何人もプロ野球選手も出ているが、ドラフトのときなどに言われる 「この選手は高校通算○本のホームラン」などというのは、自軍のグラウンドの 広さにもだいぶ影響されるのではないかと思えてきた。プロに行くような選手は 名門の高校で野球をやるケースが多く、そういう高校は専用グラウンドを持っている ことが多いので、練習試合は他校よりも自校に来てもらって行うケースが多いだろう。 また、高校野球の2年4ヶ月の中で、こなす試合は公式戦より練習試合が圧倒的に多い。 そうなると高校通算のホームラン数というのは自校グラウンドで打ったホームランが 大半を占めるとも考えられ、それが広いか狭いかでだいぶ変わってこよう。 広陵から出たホームランバッターと言ってもすぐに思いつかず、いたとしても その力量を否定するつもりでもないのだが、そんなこともあるので、もう少し 広く造っておいてもよかったのではないかとも思えてくる。

小倉から広島に移動して到着が朝6時。世間の動向がわからないので朝食といっしょに 買ったスポーツ新聞を、広陵高校までの移動の最中に読む。なんと甲子園予選の決勝戦が 今日行われるという。広陵VS如水館だという。事前に決勝戦の日付けを一応調べたが 日にちは合わないはずだったので、雨か何かでずれたのだろう。 また、場所もしまなみ球場とかいう知らないところだった気がしていたので 観戦は難しいだろうと思っていたら、「今日、マツダスタジアム、9時半開始」。 おいおい、行けるではないか。しかも9時半というのがいかにも、前日あわてて 決めた様を思い起こさせる。通常なら13時だろうがマツダスタジアムではナイターで プロ野球が行われる。他の球場で13時からできないこともないがせっかくだから マツダスタジアムでやらせたい。それでは確実にナイターにかぶらない時間帯 ということで、安全を見て9時半に始めてしまえば、閉会式を含めても大丈夫だろう。 おそらくは会議室でそんな話し合いがあったのだろう。グラウンドを見に行く 広陵が決勝戦に残っているということもあり、急遽、見に行くことにした。

平和記念公園から広島駅に路面電車で移動して広島駅から歩く。広島駅から徒歩10分ほど。 線路に沿う道端にはボードが順に飾られており、広島カープの歴史や、一人ひとりの選手が 1ボードあたり1枚の写真と説明文で紹介されている。球場に向かうにつけテンションが 高まってくるようで、そして、駅から歩ける範囲で、いい球場だ。 なお、この球場を訪れたことで、現時点でのプロ野球12球団の本拠地球場すべてを訪れたことになった。

到着すると試合は4回ごろ。如水館が2点を先制していた。広陵5回1死の場面で如水館は エースをスパッと降ろして継投。よくこの大一番でこういう継投ができるな、と思ったが 選手も起用に応える。代わった2番手の左サイドが好投。如水館が2点のリードを守って9回まで来た。 しかしさすがに強豪の広陵、甲子園のかかった決勝戦、不思議なものですんなりとは終わらない。 先頭が安打、続いて四球で無死1,2塁として左サイドをKOして再びエースがマウンドに。 雰囲気としては押せ押せ、高校野球ならばひっくり返ってもおかしくない気もしたが、 如水館が耐えた。1点を失ったが2-1で逃げ切った。

平成21年7月31日 マツダ ZOOM ZOOM スタジアム
1 2 3 4 5 6 7 8 9
如水館 0 0 2 0 0 0 0 0 0 2
広陵 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1

球場に向かう道
球場風景-1 レフトスタンド奥には新幹線
球場風景-2 広陵ベンチ(坊主たち)
球場風景-3 歓喜の瞬間


マツダスタジアムでナイターのチケットを購入したあとに広島駅へ。 近くのビルの中にフロア一帯にお好み焼き店がいくつも入っているところを見つけ、 お好み焼きを食べる。若くて元気なおにいちゃんが焼いているところに引き込まれたが、 このおにいちゃんが、腕はいいのだろうが、修行中の(?)明らかに年上のおじさんを ちくちくいじめる。おじさんの方は、世の不景気の影響で職を失って、見習いとして お好み焼き屋さんに入ってきた、といったところか? 筆者も学生時代に居酒屋の厨房でアルバイトしていた際に、アルバイトをちくちくいじめる 似たような社員はいたし、料理の世界の修業がそもそも厳しくてそのようなもの かもしれないが、あまりいい気分はせず。ただしお好み焼きはおいしい。


親切な野球少年

1度ホテルに荷物を預けて必要最小限のものだけ持って広島駅へ。広島商業高校・ 広島工業高校の古豪をまわる予定だった。広島商業高校は達川が甲子園の怪物・江川に勝ったという高校、 広島工業高校は高津・新井らトップレベルの選手を輩出している高校だ。 ところが広島商業高校を通るバスに乗ってうたた寝。 2夜連続のバス泊で眠い。「広商前」を通り過ぎた気がして乗客に聞くと「通り過ぎた」と言う。 あわてて次のバス停で降車。歩いてバス停2個分くらい戻るが、交差点に着いたので 自信なく、通りかかった若者に道を聞いた。「ぜんぜん方角が違いますよ」「僕の家の近くなので案内します」。 不思議なもので、旅先だと親切な人にぶちあたったりする。案内してもらう途中で 学校のホームページからプリントアウトした地図を見せたが「これまた、ずいぶん 大胆な地図ですね」とのこと。中谷バス停のときもそうだが、インターネットの地図 (地図用サイトじゃないもの)は、あてにならないのか。彼に会えなかったらたどり着けなかったぞ。

広島商業高校に向かう途中、いろいろ話をした。彼は中学3年生の男子。 広島工業高校の学校見学があったので行ってきたという。野球もやっているのだが、 野球のためというよりは、やりたいことがあって工業高校を選択に入れているという。 やりたいことが決まっておらずに普通科に進学した筆者と比べれば、たいしたものだ。 何をしにきたのかと聞かれる。関東から野球を見に来て、甲子園に出場した学校の グラウンドを見たくて広島商業高校に向かうと答える。驚かれるが野球の話で意気投合。 午前中の広陵VS如水館の結果を彼は知らず、教えてあげた。学校見学中だったから 仕方ないとはいえ、野球少年なのに高校野球の結果をチェックしないものか...。 自分は高校時代神奈川県で最高は2年夏のベスト16、3年生の夏は3回戦敗退、相手は広島カープに いたことがある菊地原毅がいた学校だったと話した。菊地原の広島時代はもう だいぶ昔のことになったとは言え、今もオリックスで現役を続けているのだが 彼はこれも知らない。世代が違いすぎるか...。

無事広島商業高校に着いた。少年、ありがとう。グラウンドをのぞくと野球部が けっこうな人数でアメリカンノックっぽいことをやって走り回っている。 県予選が今日終わったわけだから、すでに新チームが始まっているのだろう。 あとから知ったことによると広島商業高校は前日の準決勝まで勝ち残っていた。 とすると、この日は敗退翌日の、新チーム初日の練習ということになる。 いやあ、そのわりに、熱の入った、追い込んだような練習やっていたなあ。 さすが古豪。グラウンドは、外野のネットも置きネットで専用球場というかんじではなく、 地面も普通のグラウンド。バックスタンド・ベンチなどはちゃんとあった。


よぶんに時間がかかってしまったので広島工業高校はあきらめた。 広島駅に戻るバスの中。往路で「広商前、通り過ぎましたよ」と教えてくれた 乗客がなぜか再び乗っている。「先ほどはすみませんでした。私もこの辺の ことを詳しくなくて、車内の電光掲示を見て、もう通り過ぎたと勘違いしてしまいました」 わざわざご親切に謝ってくれた。いえいえ、気にしていません。 なんだか親切心に多く触れた。


人の足が向く球場、人の心が離れる監督

ホテルにチェックインし、風呂とメールチェックをすませてマツダスタジアムへ。 通りかかる広島駅からもう盛り上がっている。広島でプロ野球がある日は、 それだけで一大イベントなのだろう。駅には弁当・おつまみ・グッズなどの出店が並び、 一帯は「カープ、カープ、カープヒロシマ、広島カープ〜♪」の応援歌が ひっきりなしに流れる。そして駅からは商店街を抜けて球場に向かうこともでき、 これまたいろいろなおつまみを用意して客引き。そして先に紹介した、線路沿いの カープ紹介ボードが並ぶ道。球場への向かい方が、野球観戦として、とても優れた球場だという ことを思った。まずメインの駅から歩ける範囲。これが電車を乗り継いだり、 駅からバス・タクシーに乗ったり、では面倒だ。そして近すぎるわけでもない。 街の雰囲気、野球観戦への気持ちの高ぶりを感じながら徐々に球場が近くに見えてくる。 観戦帰りに寄れそうな飲み屋さんもそこそこありそうだ。東京ドームや横浜スタジアムは、 駅からほど近く店も多いが、上記に照らし合わせると「近すぎる」とも言える。 今回訪れた福岡ドームは、博多駅から乗り継がないといけないし、唐人町駅からの距離は ほどほどではあるが駅に向かう道に店などはあまり見当たらない。球場もなかなか見えてこない。 地方球場になってしまうと最寄り駅からバス・タクシーというところも多い。 マツダスタジアムは、今まであまり気にしていなかった「野球を見に行くのに優れた球場」 と言えそうだ。広島駅から見ると旧広島市民球場よりもアクセスしやすい (ただし県庁前からは旧広島市民球場が近いので、市民の生活圏がそちらにあるのであれば 必ずしもマツダスタジアムにメリットがあるとは言い切れない)。

カープの軌跡-1 球場内のボード
カープの軌跡-2 球場外のパネル
試合前練習-1 武山を教える杉村コーチ
(まさか今日、大事な打席が...)
試合前練習-2 両打撃コーチ、丸い人と長い人
(杉村・駒田の玉ネギ・長ネギコンビ?)
試合前練習-3 広島のアップ

平成21年7月31日 マツダ ZOOM ZOOM スタジアム
1 2 3 4 5 6 7 8 9
横浜ベイスターズ 0 0 0 0 0 1 3 0 3 7
広島カープ 0 1 0 0 0 0 0 4 1 6


(左:試合前の整備、右:ほぼ満員の外野スタンド)

試合はすごい試合になった。広島は青木高、横浜は吉見と、両左腕が先発。 青木高は社会人野球時代に筆者のチームと対戦している投手であり、 個人的にがんばってほしいとは前々から思っていたが、まさかこんなところで 生で見られるとは思っていなかった。昔よりも腕の位置を下げたのかな。 両投手ががんばって5回で1-0と広島リード。 ところが両投手のがんばりが記憶の彼方に飛ぶような終盤のドタバタぶりだった。 まず青木高が代打を出されて5回までで降板。球数も多くなく、横浜打線もタイミングが 合っていないが、なぜ降ろす? メジャー流か。6回に横浜が追いつき、7回には 吉見の代打(吉見は1失点のままここまでで降板)・ジョンソンが3ラン。4-1横浜リードとなった。 しかし8回に広島は代打廣瀬の2塁打で1死2,3塁と好機を広げ、東出の遊ゴロを 石川が痛恨のエラー。さらに代打末永が右中間を破って同点とし(末永の打撃センスのよさは 前から評価されていたが、この試合も低めの球をうまく打ち返しフェンス際まで飛ばした)、 天谷のヒットで逆転。5-4広島リードで9回に永川が登場。横浜ファンとしては 1点ビハインドくらいなら永川が荒れてくれないかと期待したら、現実に。 痛恨のエラーを犯した石川が執念の内野安打(+悪送球)で無死2塁。 下園の3塁前への送りバントはマクレーンと永川が譲り合う形でヒット。 武山の初球に盗塁して無死2,3塁。好機が巡ってきた。ただし横浜も、武山、 次の代打準備が桑原義、続いて藤田と、ほぼ2軍に近いメンバーで永川を打つのは難しそうだ。 武山がフォークに食らいついて打ち返すも浅いセンターフライ、桑原義は直球に詰まってサードゴロ (石川ギャンブルスタートも本塁アウト)で2死1,3塁となった。逆転のピンチが 勝利まであと一人となってにわかに球場全体から永川コールが沸き起こるこの場面、 なんと藤田の初球にワンバウンド暴投。労せずして同点。永川コールはため息に変わる。 藤田がヒットでつないで1,3塁で内川。ようやく1軍トップレベルにまわってきた。 内川はサードゴロに打ち取られるも、マクレーンがまさかの後逸。逆転。 村田にもタイムリーが出て7-5とリードした。

さあ、横浜は山口で逃げ切りかと思いきやそうもいかない。こちらもエラーしたマクレーンがヒット、 永川の代打・嶋がストレートのフォアボールで、珍しく3塁側ベンチから田代監督代行がマウンドへ。 後の新聞記事によると、カツを入れに行ったとのこと。石原はバントが小フライになって1死。 石井琢が初球をセンター前ポテンヒットで満塁。廣瀬にまわった。廣瀬はここも、 あわやといういい当たりを打ち返すが左中間寄りの打球はレフトフライとなって、 タッチアップで1点入り2死1,2塁。東出にまわる。2塁に来ていた嶋に、代走・緒方。 思えば廣瀬・末永・嶋と、代打で好結果を出し、なおのことこの期に及んで 代走で緒方が控えている。控えの層、厚いではないか。東出はセカンドゴロ。 なんとか横浜が勝った。少したって思うと、緒方が代走ではなくて東出の代打で 出てきた方が、横浜ファンとしてはイヤだった。

広島駅への帰り道。広島ファンのストレスはたまる。村田がヒーローインタビューを受けている ことを話した子どもに対して父親、「ヒーロー? そんなのいないだろう。永川だ、永川」。 おいおい、ブラックジョークとしてはおもしろいけれど子どもに言うなよ。 道端の永川のボードが、「しっかりしろや」 とばかりにうちわではたかれる。直接の原因は永川の乱調とマクレーンのエラーだろう。 ただ、広島の試合をそんなに注意深く見ていない筆者がこの1試合でたいしたことを 言えないかもしれないが、この1試合だけに限ればおかしな采配が散見された。 まずはなぜ青木高を降ろしたのか。これが1番大きい。9回の逃げ切りの場面では、 マクレーンの守備があの程度ならば誰かしら守備固めを出してもよかった。木村か梵あたりいなかったか。 追いつかれれば9回裏に5番のマクレーンに打順がまわるからかもしれないが、 ならばなぜ永川は6番に入れるか。控えに廣瀬・末永・嶋・緒方がいることは驚異的ではあり、 実際に結果も出しているが、逆に彼らが先発で出場することは考えられないのか。 極めつけが代打緒方ではなく代走緒方に終わった最後のシーンである。 ファンも同じようなことを感じているようで、シュルツを登板させなかったことを 批判する人もいた。どのみち今年Aクラスに入れなければ退団と言われていたブラウン監督だが、 こんなことをやっていては、それもやむなしだし、たぶんAクラスには入れないだろう。 また、退団を止める地元の声もだいぶ少ないだろう。

試合としては考えられないプレーの連続でおもしろく、盛り上がりもしたが、 プロフェッショナルの選手が見せるプレーとしてはいささか残念だった。 下位にいるチーム同士の対戦ゆえしかたないのか。石川のエラーもマクレーンの エラーも、軽率でいただけない。広陵高校や、独立リーグの選手が彼らのプレーよりも レベルの高いプレーをできるとは思わないが、あの打球を処理することだけならばできたのではないか、 できなくてももっと必死にひたむきにプレーしたのでないか、そんなことを思わせる。

球場はとてもよかった。スタンドの1階奥のコンコースがぐるりと1周できるようになっている。 そしてこの位置から(だから座席からももちろんだが)フィールドが、とても見やすい。 外野からでさえ、見やすい。 一般的に説明されている通り、角度をゆるやかにしていることとかファールグラウンドを 狭くスタンドとフィールドの距離を近くしていることとかで、近くで野球を やっているというイメージで見られる。高いところから見下ろすようだと遠いし、 かといって同じ高さで見ると遠くが遠すぎる。砂かぶり席やテラス、 寝そベリアなどに着席はできなかったが近いところまでは行ったりして、 なるほどそれぞれに景観は悪くない。2階でも「選手が米つぶ」というほど小さくもない。 角度の工夫。そういう方法があったのか。これはいい。

座席模様-1 内野砂かぶり席、近い!
座席模様-2 びっくりテラス
座席模様-3 コカコーラテラス。多少「上から目線」
座席模様-4 空に突き出るスカイシート
座席模様-5 バックスクリーン下が「寝そベリア」
座席模様-6 3塁側応援席、これも空に突き出るかんじ
座席模様-7 レフト最後列もそんなに遠すぎない
座席模様-8 バックスクリーン真横のウッドデッキ席
横浜ベンチ 寄りかかっているのが観客席から見えるつくり
(右にスタッフ、左に選手。やる気なさそうにも見える)
試合風景 青木高が村田を打ち取る
風船飛ばし インフルエンザ渦中でも


ブルーなマスカット

ようやくベッドで寝る一夜を過ごし、翌朝は6時すぎのチェックアウト。 広島駅のマクドナルドで朝食を調達すると、中国人女性がアルバイト。 いろいろなところに中国人がいる。広島駅からJRで東へ。中庄駅の到着は9時15分。 3時間弱の電車旅だった。

雨が相当降っている。この日は帰り道ということで、お土産を含めて荷物をすべて持っている。 そこに傘をさしての徒歩で、大変だった。なんとかたどり着いた岡山マスカットスタジアム。 マツダスタジアム同様に駅からほどよい距離とは言えるのだが、駅前も含めて 店などほとんどない。球場は、外観(外壁)がブルー基調。 マスカットって黄緑色じゃなかったのかな。雨ではあるが中学生の野球の大会の 開会式っぽいものが予定されているらしく、何チームかが集結していた。 おかげで中に入ることもできて中の写真も撮れた。芝生はさすがに黄緑色。 中から見ると、スタンドも含めて坊ちゃんスタジアムに似ているな。


侮れない城東

さらに中庄駅から東に移動。岡山駅を通り越した東岡山駅。これまた、駅前が 別段栄えてもいない駅だ。タクシーに乗車。岡山城東高校を目指した。

筆者の所属するクラブチームの後輩に、岡山城東高校の卒業生が二人いる。一人は海外赴任中だが、 もう一人のWから事前にいろいろ聞いておいた。岡山城東高校は新興の公立校だが 平成2年に2期生が甲子園出場を果たしている。以来、15年間のうちに春3度、夏2度の 甲子園出場を果たし、平成8年春にはベスト4まで勝ち進んでいる(ここ5年ほどは甲子園から遠ざかっている)。 かといって野球校ではなくて進学校である。 二人の後輩も、東京都立大学・筑波大学にそれぞれ進学するなど、国公立大学に 進む卒業生も多い、優秀な高校である。岡山で甲子園出場経験校と言えば、 必ずしも岡山城東高校が有名なわけではないが、後輩たちの母校を、あえて見に行った。

もともと何もない駅から、道を多少入り組みながら、到着。 普通の高校だ。グラウンドも、野球場というかんじではなく、他部と共用するグラウンド。 そこそこ面積はありそうな気がするが、黒土なわけでもない。よくここから甲子園に 行ったと思う。それも大昔の学校数が少なかったときとか、ある年に1回だけ行った、 とかではなくて、実績を残しているわけだから、たいしたものである。 また、野球に対して意識の高いWのような卒業生を輩出もしている。 グラウンドとは比例しない例だ。


(雨中の岡山城東高校。他部と区切るようにレフト側に置きネット)

ここでもタクシー運転手の話はおもしろかった。文武両道で部活動は1日2時間ほどしか 練習しないのによく甲子園に行っている、でも練習量が少なくて体力が心配で 甲子園ではなかなか勝ち進めない、そんな岡山城東高校も監督が代わってから 勝てなくなってしまって前監督が就任した岡山学芸館高校の方が強くなってしまった...などなど。 この方は熊本県の出身らしく、岡山に住んでいても甲子園となると熊本代表を 応援してしまうとも言っていた。このあたりは、出身も在住も神奈川県である 筆者からすれば経験していない感覚だが、言われてみれば今から神奈川県外に 住んだとしても、やはり甲子園では神奈川代表が気になるだろう。

実は岡山城東高校の話はここで終わらない。このあと同日に大阪の住之江公園野球場で 関西独立リーグの試合を観戦するのだが、スタンドで筆者の後方に陣取って 観戦していた何人かの集団が、どうやら岡山城東高校の関係者らしく、その話をしていたのだ。 大阪で高校野球の話を聞いてもどうせわからない、と思っていたが、よく聞いていると 前監督の名前や、「学芸館」の名前、今年ミズコウ(水島工業高校だろう)に0-4で敗れたこと、 現監督らしき名前があがった人は聞き覚えのある名前だが、監督よりもコーチの方がやりたい(向いている?)こと、 近年は倉敷方面の学校が強くなってきたことなど、岡山城東高校を指す話題が満載だ。 歴史は少ないとは言え多方面に多彩な人材を輩出しているであろう、文武両道の 岡山城東高校、大阪でも話題になっているとは侮れない。 というか、彼らが岡山から大阪まで観戦に来たのだろう。それはそれで侮れない。


何しに行った、舞洲

東岡山から岡山に戻って(少し西に動いて)、新幹線で新大阪へ。ここは新幹線を使ってしまった。 もともとこの日はナイターの関西独立リーグの試合を見る予定で、夕方に大阪に 着けばいいはずだったのだが、出発前に、大阪の甲子園予選決勝戦が8月1日に なったことを知る。これまた、少し前の記憶では日にちが重ならなかったはずなので、 雨か何かで延びたのだろう。舞洲ベースボールスタジアムというところでやるという。 わりと名前を聞く球場だが行ったことはない。球場をメインに、行くことにした。 なお、舞洲が「まいしま」と読むことは旅行出発直前に知った。

新大阪から大阪に移動してJR。桜島駅というところで降りるが、若者でごった返している。 しかも派手な格好ばかりだ。さすが大阪の決勝戦、かと思いきや、付近でレゲエの ライブがあるという。臨時シャトルバスが何台も出ているのだが次から次へと 若者は来る。野球観戦の人たちもいるにはいる。バスがなかなか来ないので行列になっている。 ただし人数はレゲエがはるかに多い。


(若者でごった返す桜島駅前)

ようやくバスに乗れたが道が混んでいて遅い。だいぶ時間がかかってようやく 舞洲ベースボールスタジアムに着いた。これまた、埋め立て地に造ったような かんじで海が近い。一帯がリゾート地っぽくなっていて、いろいろ施設はある。 球場もなかなか立派だ。試合はすでに4回くらい。PL学園と関大北陽の一戦。 関大北陽は阪神タイガースの岡田元監督の母校らしく、昨日の準決勝戦も観戦に来ていた (うえに途中で帰ったあとに逆転勝利した)という記事がスポーツ新聞に出ていた。 今日もどこかで見ているのだろうか。ただし試合はすでにPLが4-0とリード。 スタンドの盛り上がりは関大北陽も負けていないかんじはするが、いかんせん、 試合の方は淡々とPLが強さを見せつけていくだけの展開だった。試合としての おもしろみはなく、決勝戦としてはものたりない。帰りの足が心配になったこともあって、 8回表終了、PLが8-0リードまで見届けて球場をあとにした。ところが球場から乗る バスが来ない。球場の目前が、上りも下りも渋滞だ。タクシーは何台か通るが、 格安旅行を心がけているだけに我慢。結局試合終了のサイレンを球場外で聞き、 終わってから出てくる観客も見届ける始末。40分くらいバス停で待ってようやく乗車。 しかし道自体が混んでいるのでこれがまた進まない。西九条駅に、40分ほどかかって到着した。


(広くてきれいでなかなかいい。わかりにくいが、ベンチの位置が普通より外野寄り)

舞洲というところは、海も近いこともあって、休日ともなればそもそも人の出足が 多いところらしい。それに加えてレゲエのライブなり野球の試合なりが開催される 施設も持ち合わせているわけだから、日によってはさらに多くの人が流れ込む。 そういったことはわかっているだろうに、なんというか、交通網が整備されていない。 電車の最寄りは桜島駅だが歩くのは厳しい。バスが出ているが、そもそも道路の 選択肢がないようで、バスもタクシーも自家用車もみんな同じ道を通ってくるわけだから混むのも当たり前だ。 もう少し道路もしくは駐車場の整備、新たな交通網の開発を検討してもらいたい。

球場を見られたことは収穫にせよ、野球の試合は心に残らず、時間も浪費し、 とはいえこの観戦のために新幹線も使って移動してきた。 来る必要なかったかな、舞洲。


なるほど、関西独立リーグ

西九条駅から電車を乗り継いでへとへとの状態で住之江公園に到着。 公園内の野球場で関西独立リーグの試合があった。リーグは折りしも、 神戸9クルーズで中田監督解任、吉田えり投手離脱などが話題になっている時期だった。 もともと財政難のことなどが話題になっており、何かと話題に事欠かないリーグ、 どんなものなのか楽しみに見に行った。

試合は大阪ゴールドビリケーンズVS紀州レンジャーズ。後期が始まっており、 前期は大阪の優勝に終わったらしい。チャンピオンチームを見ることになる。 スタンドは北九州市民球場でのアイランドリーグを思わせるかんじの閑散、 球場もフィールドは普通ではあるがスタンドなどの施設は充実しているとも言えない。 チケット売り場ではチケットや少々のグッズの他、募金箱も置いてある。 財政難をうかがわせる事象はそこここにある。


(球場風景)

スタンドには両チームとも、少々の応援団が来ている。紀州の応援団の声が より耳に入ってきたが、なんとも関西らしく、おもしろい。 「朴(パク)」という韓国人が二人いるのだが、スタメン発表で名前がコールされると 場内アナウンスに向かって「どっちや〜?」のつっこみ。陽もとっぷり暮れて夜になり、 照明が点灯すれば「暗いがな、もっと明るくしてや〜」とヤジ。いや、確かに なんとなく暗い気はする。照明をケチっているのか、そもそも照度が足りないのか。 関西らしいつっこみに、関西らしいケチ具合と、リーグの財政難とを合わせて感じさせられる。


(暗めの照明。照明塔の位置が低いのか?)

野球のレベルは思ったより、よさそう。四国・北信越に次ぐ独立リーグということで 後発の印象は否定できず、レベルも見劣りするだろうと予想していたが、 関西自体の野球のレベルが高いからか、個人の能力は悪くなさそうだ。 打てる打者、遠くに飛ばせる打者もそれなりにいる。四国・九州アイランドリーグのチームと 直接対戦したら、試合は勝てないような気がなんとなくするものの(チームの成熟度の差で)、 個人の能力は大差ない気がする。

ファンサービスとしては、5回終了時にちびっこによるベーラン競走があった。 体が1番大きい子(10歳くらい?)が優勝はしたのだが、5歳くらいの子は 1塁を駆け抜けて内野と外野の芝の切れ目まで走り、そこから2塁に向かって 2塁を蹴ったあと直接本塁に向かうという、考えられない走塁を見せたりして 愛嬌はあった。

平成21年8月1日 住之江公園野球場
1 2 3 4 5 6 7 8 9
紀州レンジャーズ 1 0 0 0 0 0
大阪ゴールドビリケーンズ 0 0 5 0 0 0

帰りの新幹線のこともあるので20時、7回表途中で球場をあとにした。 印象としては、当初の予想と大きくは変わらない。球場にしてもスタンド風景にしても、 そんなに見栄えのするものではない。照明が暗くてより財政難を感じたことと、 思ったよりもレベルが低くなかったことは多少、予想とはずれるが、まあ、 なるほどこういうものか、とは思った。北九州でも感じたが、都市部での 野球独立リーグはやはり難しい。この日にしても、舞洲では高校野球の決勝戦を やっているし、大阪ではないにせよ甲子園球場では同じ時刻にプロ野球の阪神VS巨人戦を やっている。その中でわざわざ独立リーグを観戦するという選択をする地元民はまれだ。 独立リーグとして日本で3番目というように、目新しさを欠いているのも痛い。 運営会社が絡んだゴタゴタは痛い失策ではあるが、それもやむなしというか、 それがあってもなくても繁栄は難しいのではないかと感じさせられた。 近日のゴタゴタぶりに妙に納得して帰ってきた。

紀州応援団 少人数だが盛り上がってる
試合前、大阪パフォーマンス デカい48番は
元巨人リリーフエース・石毛(現コーチ)
スタメン発表 DJの紹介により
試合風景
5回終了時、ベーラン大会 2塁から本塁に走ってきてしまう子ども

蛇足ではあるが、それがゆえこういう試合をわざわざ見に来る人は「濃い」。 先に紹介した岡山城東マニアたちは、どうやら紀州先発の宇高を見に来たらしく、 ふだんの宇高よりいいとか悪いとか、変化球の調子がどうとか、いろいろ話していたうえに 宇高がKOされたら帰ってしまっていたが、大阪の平下を指して「エフワン-セブン」。 野村監督が阪神タイガースの監督時代に、足の速い7人を集めてそう名づけていた気がし、 元プロの平下晃司はその一人だ。この日のプレーぶりはまったく元プロらしさはなく、 だからということを除いてもそんなニックネームは忘れていたが、マニアはさすがだ。 言われても7人思い出せないが、今どうしているのか? 赤星は入っていたと思う。


まとめ

多少の誤算はあったが、予定通りに、あるいは予定以上に野球を満喫できた旅だった。 当初は独立リーグ2試合とマツダスタジアムでの1試合を観戦できればと思っていたところ、 天候のおかげか高校野球の日程が変わり、予定に対して決勝戦2試合を加えることができた。 うれしい方の誤算である。おかげで甲子園出場校の方は、倉敷商業高校・水島工業高校など 省かざるを得なかったが、知っている人が出た小倉高校・岡山城東高校は見ることができた。 うたた寝で広島工業高校を逃したのは残念だったが、おかげで人のやさしさに触れることができた。 岡山では雨に降られたが全体的に天気にも恵まれた。

高速バスでの宿泊移動など、いい歳をして何をやっているのかと思う点は、 自分から見ても多くある。女性のパートナーとの同行はもちろんのこと、 相当の野球好きの男性友人との二人旅でも今回のルートは取れないだろう。 そこまで価値観が一致する人間がいるとは思えない。よくこんなことをやっているとは 自分でも思うものの、逆にそれをやりきれる自分がうれしくもある(多少強がりがあるが)。 独身の身軽だからできること、ただ、逆に独身のうちにやっておこうと思って、強行した部分もある。 根拠なく独身時間が残り少なくなっている気もしたりしなかったり...(?)。


筆者のメールアドレス

筆者の「ひとりごと」集のページ

筆者のホームページ